新しい教育へ〜長澤佳則〜

教育コンサルタントとしての活動報告をしております

起業家にインタビュー 第2弾

株式会社NextTeachers代表取締役社長  渡辺健太さん

 

今回は株式会社NextTeachersで代表取締役社長を務めている渡辺健太さんにインタビューをしてきました。NextTeachersは、教員の授業研修やICT活用研修、学校広報、教員のキャリア支援と学校の採用の支援を、主な事業として行っています。

渡辺さんは、以前TikTok Japan やデジタル教材プラットフォームのLibryで働かれていて、2022年8月にNextTeachersを立ち上げられました。

『スタートアップ的人生戦略』で紹介されている起業家が持つべき6つの資質について、渡辺さんの実体験や考えをご紹介していきます。

 

 

①市場調査~どうして教育業界を選んだのか?~

学生の頃から教育分野に興味を持っていた渡辺さんは、大学も教育学部に進み、社会科、地理歴史科、公民科の免許をとられました。とても興味深かったのは、教育分野に興味を持ち始めたきっかけです。20数年前の中学生時代、ちょうどパソコンでチャットサイトが流行ったときに、チャット上で知り合った同年代の友人に学校に通えていない子がいたそうです。渡辺さんは、「彼らがどうして学校に通えないのか」というところに興味を持ち、不登校になってしまった友人たちから様々な話を聞きながら、学校の制度等に対して疑問を持つようになりました。

元々、教えたい科目は特になく、背中を追っかけたい先生も特にいなかったため、

先生にどうしてもなりたいという感じではなかったそうです。ですが、日々学校現場で生じる問題がどうして生まれてしまうのかというところに興味関心を持ち続けてきました。大学を卒業後、いったん教育から離れてデジタルマーケティングの分野に飛び込んだのも、学校現場で生じる問題をデジタルの力で解決できるのではという考えがありました。

その後、GIGAスクール構想などで学校教育が変化し始める時に、教材のデジタル化を行う会社に転職して、教育分野でのマーケティングを本格的に行いました。学校でのICT化が進む中で、渡辺さんが大きく感じた課題が「学校の先生の中で、ICTに関する意識の差が大きすぎる」ということでした。ICTが教育の質を高めると考えて取り組む先生もいれば、生徒や先生の手元にICT機器があるのに一切授業で使わない先生もいる。このような状況を何とか解決したいという気持ちで、渡辺さんは起業を決意されました。

渡辺さんが考える「良い先生」というのは、「5年後、10年後、20年後を見据えた上で何を教えるべきかをしっかりと考え、日々学び続けながら変化することができる先生」です。年齢関係なく、「良い先生」が学校を引っ張っていける状態を作っていきたい。「良い先生」が、より輝ける環境やキャリアプランを作る、ここに需要があると見込んで、NextTeachersでは、教員の授業研修やICT活用研修、学校広報の支援を行っています。

 

 

②他者にない強みと③人脈作り

渡辺さんの強みは何といっても「情報収集能力」と「広くて深い人脈」です。

WebサイトやSNSで拾える情報だけでなく、学校の先生から教えてもらえる1次情報を集めることを意識的に行っているそうです。デジタルで手に入る情報は地図を描くためのもの。先生からの1次情報は、ビジネスの意思決定を行うために用います。

 

先生から学校現場に関する生の情報を得るためには、人脈作りが欠かせません。

渡辺さんが人脈作りで意識していることは、自分がもっている情報をまずは「Give」すること。

仮に「お返し」をもらえる確率が低かったとしても、全力で相手が欲しがっている情報を教えてあげる。そうすることで信頼関係が構築されて「広くて深い人脈」を作ることができるそうです。

私も渡辺さんからたくさんの有益な情報を教えてもらっています。お返しがほとんどできていないですが、それでも渡辺さんは私が知りたい情報を教え続けてくださります。

「100与えて、50しか返ってこなくてもいい。与え続ける人に情報が集まってくると信じています」

渡辺さんのこの言葉に起業家としての哲学を強く感じました。

 

④幸運 ~幸運はどうやったらついてくると思いますか?~

幸運が降りかかってくるために渡辺さんが意識されていることが2つあるそうです。

1つ目が、先ほどの人脈作りでも出てきましたが、とにかく人に「Give」を多くしていくこと。

そして2つ目が、周りの人に自分の思いを伝え続けること。

 

[「Giveしながら、自分の思いを伝え続けていれば、必ず自分の思いを聞いてくれていた人が、幸運をもたらしてくれる。その幸運はいつ来るかわからない。だからこそ、Giveと思いを伝え続けることを止めてはいけないのです」と渡辺さんは力強く語っていました。

 

⑤リスクへの考え方~どうやったらリスクをとれるようになるか?~

渡辺さんは小さいころからリスクをとった行動をしていたとのこと。

例えば、中学生の時にチャットサイトで知り合った大人のオフ会(当時は「危ない」という感じがあった)に危険性を考えずに参加していた。特に親御さんから「危ないから行くのやめなさい」と言われることもなかったそうです。高校選びも大学選びも会社選びも転職の時も、誰かの意見で決めたことはない。「止めときなよ」という言葉から離れた環境で育ったかもしれないと渡辺さんは振り返っていました。

また、会社員を辞めて起業をする際に不安はなかったかという質問に対しては、仮に事業が上手くいかなくなったとしても、会社員には簡単に戻れるという自負があるので、金銭的なリスクを感じていないとのことです。

やはり、「保険」があると新しいことにも挑戦しやすいということですね。

 

⑥変化への適応~時代が変化にどう対応していきますか?~

渡辺さんは、「良い先生は5年後、10年後を意識しながら変化できる人」と定義しているので、自分自身も常に先を見据えて変化していきたいと考えています。

新しい技術が社会課題を解決するのであればその技術をしっかりと学び、自分の事業に組み入れていきたいが、ただ単に目新しさをウリに、それを使ってお金儲けだけをするビジネスには興味はないとおっしゃっていました。

 

 

私もまた渡辺さんと同じく教育業界で働いています。ある意味ライバルではありますが、それでも渡辺さんは私に多くのプレゼントを与えてくれます。私も渡辺さんを見習って多くの方にGiveできるように変化していこうと思います。

 

起業家って本当に面白い!

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